『上海游記・江南游記』芥川龍之介著

今から85年前の大正十年(1921年)、芥川氏が29歳の折、中華民国建国十年目の中国各地を遍歴し、政治、文化、経済、風俗などについて、彼が見聞きしたことを書き記した中国印象記。表題作の他、『長江游記』『北京日記抄』『雑信一束』などが収録されている。

これを読むと、共産党出現前の中国の様子を知ることができ、日中戦争に突入する前の日本の知識人が、中国の有識者に畏敬の念を抱いていたことや、当時中国と日本を比較した場合に、決して日本の方が進んでいるとの認識ばかりではなかったということを知ることが出来る。

その後中国は大きな遠回りをすることになった訳だが、どうやら振り返ればすぐ後ろを走っているという状況になったのではないだろうか。

この紀行文は、そもそもが大阪毎日新聞の依頼によって、中国に赴き書かれたものであり、帰朝後に毎日一話ずつ新聞に連載されたものであることから、一つ一つの話は短く、大変読みやすい。

読んでいてふと思ったのは、これは何かに似ているということ。そう、ブログの文章にそっくりなのである。さしずめ今ならYahoo!やNiftyなどが、自社のブログの読者を増やす為に、時の有名人に依頼して、旅行記を書いてもらうのに等しい。

そんなことを考えながらこの本を読むと、85年の時を隔てた文章とは全然思えなかった。

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