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都銀出身の覆面作家、黒木亮氏の新作である。ストーリーはモルガン・スペンサーの桂木、ファースト・スイス証券の藤崎、そしてソロモン・ブラザーズの竜神という、三人の外資系金融機関に転じた日本人を同時進行的に描くことにより、巨大投資銀行の本質とは何か?、そこで働く日本人とは?といったテーマで切り込んだ本である。
M&A、株式や債券の引受、アービトラージ取引などに代表される投資銀行業務は、もはや金融関係者だけの関心事ではなくなった。昨今は一般の企業に勤める人にとっても、いつ自分の会社が巻き込まれるかもしれなくなり、知らずに済ますことができない話題となった。
この本はこの20年間に、日本を舞台として欧米の巨大投資銀行が、如何にして莫大な収益を上げてきたか、言い換えれば、如何にして我々がカモにされたか、そしてその中で日本人がどの様に苦悩しながら戦ってきたかについて、現場にいた人間でなければ知り得ることのできないリアリズムを持って書かれた作品である。
その為、フィクションであるにも拘らず、もしかして大手センタービルや、ファーストスクエアビルで登場人物とすれ違ったことがあるのではないだろうかと錯覚を覚えさせる程のリアル感がある。
彼の作品は、棺桶に片足を突っ込んだS氏やT氏が書くような「外資イコール悪、そこで働く人間も悪」といった、ステレオタイプの小説とは大きく異なる。
彼がこれまで書いてきた作品には、外資のやり方についての一方的な善悪の判断が書かれることは少ない。その代わりに、そこで働く日本人に対する暖かい眼差しをいつも感じることができるのである。
この本は外資系の投資銀行に転就職したいと考えている人や、日頃これらの投資銀行と仕事上で対峙する可能性がある人にとって、彼らが一体どの様なインセンティブで仕事をしているのか、その仕事の進め方は、などを知るに格好のテキストではないだろうか。
ところで主人公の一人は、最後に再び日本の為に働こうと決意する。読み終えて、自分の働き方、生き方を考えさせられる本だった。
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