『永恒的張國榮』



あれは2年前の今日の夜の事だった。ネット上のニュースで、香港のトップスターである張國榮(レスリー・チャン)が、セントラルのマンダリンホテル24階から、投身自殺を図ったというニュースを目にしたのは。

ちょうどその日がエイプリルフールであったこともあり、俄には信じる事ができなかった。「ちょっと洒落がキツ過ぎるんじゃないの」と半信半疑であった。嘘だと信じたかった。しかし、日が変わってからも現地から引き続き送られてくるニュースなどを見て、彼の死を確信せざるを得なかった。

私が初めて彼の名前を目にしたのは、20年近く前に南の国に赴任している頃、大丸デパートの地下にあるカセットテープショップで、広東popsのテープを漁っている時だった。お店の人に、「今一番流行っているのは誰?」と聞いたところ、男性ではレスリーを、女性では、山口百恵のカバーなどを歌っていた梅艶芳(アニタ・ムイ)(故人)を紹介してくれた。

その両方を買ったのだが、彼のテープの中の歌声は、美声と呼ぶには遠く、吉川晃司の『モニカ』のカバー等、騒がしいものが多かったことから、一曲(『當年情』)を除いてあまり良いとは思わなかった。むしろ陳百強(ダニー・チャン)(故人)の柔らかい歌声の方が、南の国に一人赴任した私の心を癒してくれた。

私が彼のことを再評価したのは、彼が91年に一度歌手を引退し、93年に『覇王別姫』で再び銀幕に登場して以来、『金枝玉葉』(94年)をはじめとして、立て続けにヒット映画に出演する様になり、歌手活動を再開してからのことである。。

それ以来香港やシンガポールに旅行した時には、必ず彼の新作のVCDを買ってきて楽しんでいたものだ。周潤發(チョウ・ユンファ)や成龍(ジャッキー・チェン)、李連杰(ジェット・リー)などが拠点を米国に移したこともあり、実質彼が香港映画界を一人で引っ張っていたとも言える。

李明(レオン・ライ)、劉徳華(アンディ・ラウ)、梁朝偉(トニー・レオン)などもいるが、レスリーの『深み』には及ばない。最近流行りの周星馳(チャウ・シンチー)なんて、もってのほかだ。むしろ香港よりも韓国の李炳憲(イ・ビョンホン)などの方が彼の雰囲気を受け継いでいるかも。そんなことを言うと両方のファンからお叱りを受ける気もするが。

彼の死の報に接してから、2〜3ヶ月、毎晩彼のCDを聞いていた。普通芸能人が死んだくらいでは、一日二日位で忘れてしまうものだが、この時は重傷だった。そもそも何故人気の絶頂にある彼が、死を選ばなければならなかったのか、理解できなかったからである。

ちょうどその頃、『異度空間(カルマ)』という映画を撮り終えた頃で、その中の主人公が精神を病み、最後にビルの屋上から飛び降り自殺をするシーンがあったことが、影響しているなどという話もあった。この映画はこの春、中国大陸でも心理学講座付きで上映されるという。

中国でも彼の人気は衰えておらず、彼の半生を描いたミュージカル『永恒的張國榮』が現在上演中である。彼に扮するのは、台湾人歌手で彼のカバーCDなども出している陳志朋(ベニー・チャン)。見た目は結構似ている。

俳優は子供がいれば、その子供がまた俳優になることで、ファンはその面影を偲ぶこともできるのだが、彼には息子はいなさそうだ。

昨日、彼や、陳百強、テレサテンなどの曲を聞いていたら、家内から、「どうして死んだ人の曲ばかり聞くの?」と咎められてしまった。「歌手は絶頂期にいなくなってこそ、『神』になれるんだな」と、思った次第である。今日は、このサイトで一日中レスリーの曲が流れている。

ところで、一月以来、毎日このブログを書いてきたのだが、もうネタ切れになってしまった。短い間であったが、毎日見に来てくれた人に感謝して、今日でおしまいとさせて頂こうと思う。皆さん、どうもありがとう。

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