太ったソクラテス

「太った豚より、やせたソクラテスになれ。」という言葉は、1964年3月の東京大学の卒業式で、当時の大河内総長が卒業生に向けて語った言葉だとされている。「されている」というのは、事前原稿を受け取った新聞社が、この言葉を決め言葉として新聞記事を書いたのだが、大河内総長は、実はそこの部分を読まなかったらしいのだ。
しかし、どう考えてもどちらかを選べと言われれば、後者の方を選ぶのが当然だろう。
私は不思議に思ったので、少しその言葉を調べてみた。するとこれは大河内総長のオリジナルではなくて、原典はジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』の中にあったのである。
原典では、尊厳の感覚が幸福の本質であることのたとえとして、「満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよく、満足した馬鹿であるより不満足なソクラテスであるほうがよい。」と述べているのである。つまり、太った不満足なソクラテスを、決して排除していないのだ。
実際のソクラテスがどの様な体型だったのか、写真があるわけではないが彫刻はある。ほらご覧の通りだ。大河内総長もスピーチの前にこの真実を知ったのかもしれない。
何故私がクダクダと述べたかというと、実は昨年の夏に、社内のクリニックの先生に、体重を少し落とすようにと指導されたのである。それ以来、毎月一回栄養士の先生と面談をして、少しずつ体重を落とすように心がけてきた。この若い女性の栄養士の先生が、とてもほめ上手で、「わーすごいすごい、パチパチ。」と、ほめてくれるものだから、こちらも先生を裏切らぬよう、毎日節制に努め、お陰で4ヶ月で4kg程体重が落ちて、76kgになったのである。
昨日も面談があったのだが、ウエストが締まって、ベルトの穴が最盛期よりも4つ位減ったと自慢したところ、ベルトを抜かれてしまい、ハサミでちょきんと4つ分切られてしまったのである。背水の陣を敷けというわけだ。
しかしながらやっぱり、太ったソクラテスが一番幸せではないのかと私は密かに思っているのだ。

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