私が師匠と仰ぐ伊藤洋一氏の最新刊である。伊藤氏は大手通信社のNY特派員や外国経済部デスクを歴任され、現在は銀行系シンクタンクの主席研究員の肩書きを持っておられるが、著作活動やTV、ラジオのコメンテーターとしてもおなじみである。
氏は日本に於けるグリーンスパン・ウォッチャーの第一人者であると同時に、ヤンキース松井の熱烈なウォッチャーでもあられる。
氏の活躍は、特派員譲りの軽いフットワークと、幅広いネットワークに裏打ちされている。それらは、氏のHPを訪れることで、垣間見ることが事ができる。
氏はパソコン通信の黎明期からITを仕事の為に使いこなされており、ご自分のHPを立ち上げられたのもかなり前のことである。今話題のPodcastingにも取り組まれており、iTunes Music StoreのPodcastingや、このページから毎週30分の番組をいつでも聞く事ができる。
私が氏を師匠と仰ぐ理由は2つある。1つは、ここ数年毎日氏が書かれたコラムを拝読し、しばしばその内容についてメールでやりとりをさせて頂いたこと。もう1つは、毎日欠かさず、わかりやすい言葉でコラムを書き続けておられる氏の姿に触発され、私も氏をまねて毎日自分でブログを書いてみようという気になったことだ。
さて、今回の本についてだが、氏が最近興味を強く持っておられる韓国、中国、インドについて、ご自分の目で確かめ、発見されたことをもとに、「日本も捨てたもんじゃないぞ。」と氏の見解を述べられた本である。
大筋については、毎日のコラムで話をされていたことが中心となっている。実は私が氏とメールでやりとりした話題も何カ所か取り上げられていて、一人ニヤニヤしながら読んでいた。
おそらく私だけでなく、日本中いや世界中に散らばる氏の友人や弟子達が、氏が日々投げかけた問題提起に対して様々なコメントを氏に返し、氏が更に詳しく調べられたことなどが、今回の本のベースになっているのではないだろうか。
実は私が先日一週間韓国に旅行した目的は、うまい物を食ったり、買い物をしたり、名所旧跡を訪れる為ではなかった。韓国の街をできるだけ眺め、そこに住む人々の生活はどんなものか、つまり氏のコラムで書かれていたことを自分の目で確かめてみたいと思ったからである。
たった一度の訪問で結論を出す事は早計かもしれない。ただ第一印象というのも意外と当たるものだ。歴史上はともかく、今の韓国には、日本人にとって目新しい物も、脅威と思える物も見あたらなかった。
誤解を恐れず言えば、全てが何かイミテーション(ニセモノ)の様な感じなのである。世界に通用する様なホンモノを生み出すだけの力の蓄積が有る様には見えなかった。唯一気を吐くサムスンにしても、一昔前のソニーのモデルをフォローしているに過ぎないと言えば言い過ぎだろうか。
幾つかのテーマパークへも行ったが、外見は似せて作ってあるが、そこで働くスタッフ達は、十分にトレーニングされているとは言えなかった。働く者の『美意識』というものがそこには感じられなかったのである。
一方で、韓国では中国の存在感が増しているのをひしひしと感じた。中国マーケットを抜きにしては韓国もこの先やっていけないのだろう。中国への製造拠点の移動も始まっており、国内産業の空洞化の懸念は日本以上にある。
ただ韓国で出会った多くの中国人の、「人に譲ったら負けだ」と言わんばかりの、なり振り構わぬ姿を見ていると、日本人が彼らと普通に付き合っていくには、まだまだ時間を要するだろうとの印象を受けた。
『失われた10年』とは、我々が好んで使う言葉だ。それは大手証券や数多くの銀行が破綻した事が大きく影響しているだろう。またその言葉を使って安易に記事をまとめあげようとしたマスコミの責任も大である。
それらの業界の人々が、この世も末かと10年間縮こまっていた間に、トヨタを始めとする日本の製造業はその創造力を発揮して世界を席巻し、一方で日本が『萌え文化』を世界に発信するような国になったことは、目と耳を塞いで縮こまっていた為に気づくこともなかった。
この本は、自信を失った大企業の経営者や従業員、そしてステレオタイプの記事しか書けないマスコミの人達にこそ、是非一度読んで欲しいと思う本だ。
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