『腐蝕の王国』

腐蝕の王国 (上)
江上 剛

小学館 2005-04
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今は昔、バブル経済真っ盛りの頃、本店で最も勢いのある部への異動辞令をもらった私は、即日新しい部へ挨拶に向かった。緊張しながらその部へ行ったところ、夕方になったばかりであるにもかかわらず、何人かは既に浴衣姿であった。

浴衣姿の総括次長に挨拶したところ、「おお、君か。ところで今晩納涼大会をやるので、一緒に来い。」とのこと。同じく浴衣に着替えてきた女子行員数名と一緒に、私達は、日比谷にあった半地下のパブレストランへと向かった。

どうやらその日は、暑気払いという名目ながら、役員に内定した部長を祝うパーティーだったらしい。その部に3人いた次長は、皆背丈が180cm以上あったのだが、パーティーもたけなわになったころ、その3人の次長が騎馬をつくり、その上に浴衣姿の部長を載せて、天井の低いパブレストランの中を練り歩いたのだ。まさに部長というお神輿を担ぐ会だったわけである。

部長が当時話してくれた言葉の中で、今でも印象に残っているのは次の様な言葉だ。
「私は運が良いのか、金利が低くて、幾らでもお金を貸せる時期には、与信(融資)の部に異動し、金利が高くて幾らでもお金が集まるときには受信の部に配属された。おかげでいつも良い成績を上げることができたのだ。」
というものである。もともとが『後ろ向きの仕事』にはふさわしくない性格の人だった。

ある日『銀行時評』という雑誌の記事に、各金融機関の役員についての下馬評が載っていた。私の部長については、「取締役止まり」なんてことが書いてあったものだから、誰かがこっそり部長の回覧箱からその本を抜き出し、始末した。その後部長はあれよあれよと、高い地位まで登りつめたのである。

随分と話が脱線したが、この『腐蝕の王国』という、江上氏の本を読んでいたところ、そこに描かれた『藤山頭取』に、私は、『柳葉敏郎をミドルエイジにした様な、小柄だが色黒で精力的な顔』をしていた、かつての部長と同じ空気を感じたのである。

本の内容については、『ネタばれ』となるのであまり詳しく書けないが、後に頭取となる藤山と、藤山の秘密を守ることにより、子飼いの部下となった西前、左遷された元広報部次長の金友の3人を中心に話は進む。

1985年と2003年という、バブルの時代をはさんだ二つの時点を、映画のカットバックの手法を用いて、交互に描写することにより、臨場感と緊張感を持たせている。その為、上下巻700ページになろうかという大作であるが、読む者を飽きさせない。

と書きながら、実はまだ上巻を読みきったばかりである。下巻も早速買いに行こうと思ったが、今週の金曜日(4月22日)の夜に、江上氏がここでサイン会をされるという。せっかくだから、ここで購入してお話でもすることとしよう。

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